愛しい私の手よ。九〇年の長い歳月を共に生きてきた私の手。へバーデン結節の節くれだった私の手。草を取り花を植え料理をし、掃除もできた私の手。掌はふっくらして柔らかだった私の手は、ある時急に何処かへ消えてしまった。首の神経は両肩を走り、上腕を通って手の先端へ、強烈な痺れとなって宿ってしまった。痺れと痛みで不安と焦燥で、眠れない夜もあった。朝から寝るまですき間なく働いてくれた私の手。手は万能だったのだ。この世の中に優しい神様がいて、一日、いえ一刻でもよい。元の柔らかだった私の手の感触をとりもどす事が出来たならと……。それは夢でもあり得ない事。考えると涙が溢れてくる。でも私には十本の指がある。痺れと痛みで使えなくなったとしても、この手に代わるものは他にないし、これが私の愛しい手なのだから。
病い癒え痺れ残れる両の手に
リハビリを続けて明日を信じる
病い癒え痺れ残れる両の手に
リハビリを続けて明日を信じる
作者氏名 | 林 千文 |
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年齢 | 91 歳 |
市町村 | 南箕輪村 |
障がいの種別 | 身体 |
エピソードや感想 | 初夏の花の様子です |