第24回（令和3年度） 文芸部門 自由詩 神様の奇跡

　気がついた時、世界から「平和」「平凡」の二文字は
消えていた。すべてが隔たりと断絶の中だった。昔読
んだ漫画の世界と化していた。
　私の生き甲斐だった旅もコンサートも不可能になっ
た。私にできたのは過去の忌わしくおぞましい記憶と
戯れることだけだった。現実を忘れ、乗り越える術は
それしかなかった。
　やがて私は生を見限り、神様をののしり、夢を投げ
捨て、希望を踏みにじった。
　しかし、神様は私に奇跡をもたらして下さった。か
かりつけの病院で、新型コロナワクチン接種の予約が
取れたのだ!既にこの病院も予約不可能だったのに、
空きが出たのだ!
　神様、ままならぬ状況下で生への執着さえも投げ捨
てた愚かな私、そしてあなたを頼りないとなじりのの
しった私をお救いお恵み下さり御礼の言葉もありませ
ん。私からあなたへの誹謗中傷に何とお詫びすべきな
のか⋯
　世界に一日も早く平和が戻りますように。